最強の挑戦者

鮫島彩がいない。

ベガルタ仙台レディースは、第６節を終え、３勝１敗２分けで３位につけてはいるものの、｢チームの顔｣｢なでしこの顔｣の不在が続いている。

右膝の怪我の回復が遅れているらしい。

仙台Ｌ唯一のプロ契約選手。

しかし鮫島彩は、驕るそぶりもなく、みんなが練習を終えた後の道具片付けを手伝った。
ファン一人一人を大切にし、ふれあう姿が印象的であった。

仙台Ｌユアスタ開幕戦では、チケットを買い求めるファンの写真撮影に、痛む足で立ったまま応じていた。

しかし時折、笑顔の合間に見せる寂しそうな表情が、右膝の痛みと、試合に出られない悔しさと、憔悴感を漂わせていた。


神戸戦を間近に控えた練習では、練習場の片隅でバランスボールに座って仲間の練習を眺めていた。
その後ろ姿が泣いているように見えた。

｢鮫ちゃん、大丈夫？｣
｢はい。大丈夫です。｣気丈に応えた。


幸いチームは、神戸戦でのエース伊藤の怪我が心配されるが、嘉数や安本が台頭し、長船、坂井、下小鶴らの活躍で好位置をキープしている。

みんなで鮫島ら不在選手の空白を補っている。

震災でなくなったチームが、苦難を乗り越えて仙台で復活した。

チャレンジリーグを無敗で勝ち上がって来た。

もう、失う物は何もない。

鮫島彩が戻って来た時、きっとチームは｢なでしこリーグ史上最強の挑戦者｣となるだろう。

頑張れ鮫ちゃん！