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2013/05/29 16:37
甲子園が沈黙した。
9回表1死。
3万人の阪神ファンが、勝利を確信していた。阪神のマウンドには守護神・久保が立っていた。
T4−3E
ここから、ドラマは始まった。
銀次が左前打で出塁すると、松井稼頭央が久保の投じた外角高めストレートを強引に引っ張る。
甲子園の3万人が凍りついたその打球は、右翼線へ糸を引く−。
同点となった。
楽天のバッターは代打島内が告げられた。
この試合の2日前の対広島2回戦で、二塁走者として牽制死を喫し、同点の好機を潰した。
島内は、その名誉挽回に必死であった。
カウント2−1から、久保の渾身のストレートを、島内はフルスイングで弾き返す。
その瞬間、甲子園が震えた!
打球はきれいな弾道を描き、左中間を深々と破る。
雨を含んだ芝を、白球が転々と転がった。
松井稼頭央が悠々と逆転のホームを踏む。
島内は、韋駄天の如くダイヤモンドを駆け巡り、二塁を回った時、自軍ベンチが真正面に視界に入った。
足からスライディングしてすぐに起き上がり、歓喜のベンチに向かって小さく左の掌を広げた。
格好悪そうにする島内の姿が、格好よかった。
続く好機に、聖澤がダメ押しのホームランを右翼席に運ぶ。
お祭り騒ぎで最高潮となったベンチで、指揮官が頷いていた。
再び逆転された阪神に、もはや反撃の力はなかった。
楽天の「底力」が、ドラマを生んだ。
クリムゾンレッドがダイヤモンドを駆け巡り、ついに大甲子園が沈黙した。