エースの顔

田中将大は、スコアボードに入った「１」を見つめた。

43イニングスぶりの失点に、悔しさでその眼光が、鋭く光った。

その後すぐに、味方打線が逆転してくれた。
投球練習をしていたエースの形相が、“鬼”と化した。
「もう、これは俺がいくぞ！！」

田中将大が、ギアを上げた。
150kmを超える剛球が唸（うな）る！
スライダーやフォークの変化球が、切れた！

もう、オリックス打線に２塁をも踏ませなかった。
終わってみれば、４対１の完投勝利だ。
田中は、開幕から無傷の13連勝を飾った。

失った１点が、まるで大事件の様であった。
絶対勝つという、このつまらなさが、最高に面白い。

ヒーロー・インタビューを受ける田中将大の顔は、チームを勝利に導いた安堵感と、絶対エースの自信に満ち溢れていた。