常盤色のうねり。

９回表。

無死一塁のピンチで、田中がブラゼルをゲッツーに打ち取った瞬間から、ゲームの流れが、ゆっくりと変わった。

９回裏。Ｅ１−２Ｍ

田中将大の不敗神話が、いよいよ危うくなった。
しかし、劇的なラストまでの３０分がここから始まる。

満を持して登板した、ロッテの守護神・益田が、先頭打者・銀次への初球を外した途端、常盤色一色のスタジアムが、異様に弾けた。

銀次が、左翼線へポトリとツーベースを放つと、もう益田の一挙手一投足は縛られてしまった。

プレートを外すと、罵声が飛んだ。
ボールになる度、拍手とノイズが渦巻いた。

益田の表情は、プレッシャーから、闘争心が抜けたように見えた。
暴投、死球、四球、押し出し…。
球場が一体となって、目に見えない力を放った。
その二万人の“気”が、狗鷲選手をラストへ繋いだ。
ロッテは、常盤色のうねりに呑まれて行った…。

同点で、なおも一死満塁。
粘りに粘った嶋が、１１球目を捉えた瞬間に、サヨナラを悟った！
かつてないボルテージで、杜の都が熱くなった！

歓喜のシャワーを浴びる嶋に、開幕１４連勝を飾った田中が駆け付けた。

興奮覚めやらぬ嶋が、次々と抱擁を繰り返す。

Ｅ３X−２Ｍ
左中間を破ったラストボールは、フェンス手前まで転がって、止まっていた。

ボールの中心には、人工芝から付いた常盤色が、鮮やかに浮かんでいた…