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2013/05/01 02:59

バスと赤ちゃん

その日は今にも雪が降り出しそうな空で


とても寒い日でした


昼近くになって病院の診察を終え


バス停からいつものようにバスを乗りました


バスは座る席はなく


私は前方の乗降口の反対側に立っていました


車内は暖房が効いて、外の寒さを忘れるほどでした


間もなくバスは東京医科大学前に着き


そこでは多分、病院からの帰りでしょうか


どっと多く人が乗ってきて


あっという間に車内は満員になってしまいました


立ち並ぶ人の熱気と暖房とで、先ほどの心地好さは一気に無くなってしまいました


バスが静かに走り出した時


後方から赤ちゃんの火のついたような泣き声が聞こえました


ギュウギュウ詰めのバスと人の熱気と暖房とで


小さな赤ちゃんにとっては苦しく


泣く以外方法がなかったと思いました


泣き叫ぶ赤ちゃんを乗せて


バスが新宿駅に向かって走り


バスが次のバス停に着いた時


何人かが降り始め


最後の人が降りる時、後方から


「待って下さい降ります」


と、若い女の人の声が聞こえました


その人は立っている人の間をかき分けるように前の方に進んできます


その時、私は子供の泣き声がだんだん近づいて来ることで


泣いてる赤ちゃんを抱いているお母さんだと分かりました


そのお母さんが運転手さんの横まで行き


お金を払おうとすると


運転手さんは



「目的地はここですか?」


と聞きました


その女性は気の毒そうに小さな声で


「新宿駅まで行きたいのですが」


「子供が泣くので、ここで降ります」


と答えました


すると運転手さんは


「ここから新宿駅まで歩いて行くのは大変です」


「目的地まで乗って行って下さい」


と、その女性に言いました



そして…



急にマイクのスイッチを入れたかと思うと


「皆さん、この若いお母さんは新宿駅まで行くのですが」



「赤ちゃんが泣いて皆さんにご迷惑がかかるので、ここで降りると申しております」


「子供は小さい時は泣きます」


「赤ちゃんは泣くのが仕事です」


「どうぞ皆さん少しの時間、赤ちゃんとお母さんを一緒に乗せて行って下さい」


と、アナウンスが流れ


私は、どうしていいか分からず


多分、皆もそうだったと思います


ほんの数秒が過ぎた時


1人の拍手につられ


バスの乗客全員の拍手が返事となって


若いお母さんは


なんどもなんども


頭を下げていました





おわり

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