強い馬ってどんな馬だろう

安田記念、ロードカナロア強かったですね〜。
他馬に体をぶつけられて更に脚が伸びた時に「この馬、めちゃくちゃ強いな」と思いました。

馬の強さとはなんだろう、と考えた時に、馬体、血統と様々な相馬基準があると思いますが、長年馬を見てきた人々に話を聞くと、皆さん「気性が第一」といわれます。
馬体がよく、血統が良くても、走るのに向いていない性格の馬は走らない。

調教師の先生と話をしていた時に「馬はレース中、一生懸命走っているけど、あれは実は、他の馬を抜こうとしているのではない」と聞かされました。
馬は群れで生きる動物。
天敵に追いかけられた時に、一番安全な場所は、馬群の真ん中。
群れの先頭を行く馬は、行く先に障害があるかも知れない不安を常に抱えている。
馬は不安に弱い生き物です。
それを気にしない、悪くいえばそれを気にせず先を行く、ちょっとキ○ガイ入った馬が強い。
歴史的な名馬セントサイモンは、ちょっといっちゃってる馬で、馬房に入った猫を加えて天井にぶつけ殺したらしいですが、まあそういう馬の方が競馬に向いている(実際、まだ薬が平然と使われていた時代は、わざとドーピングで精神異常の状態に持っていったりしていたらしいです)。

しかし、競馬という競争は難しいところで、気性が荒ければそれで良いかというとそれは違います。

うちに、社台生産の良血馬がいます。元一口馬主の馬で、父ゼンノロブロイ、評価額2800万の良血。
実際、馬体は良く、スピードは凄いものを持っています。中央でもスピードは通用するでしょう。
しかし、中央では通用しなかった。
その理由は、勝ち気すぎる気性にあります。
常に全力疾走のため、距離が持たないのです。
人間で考えれば、100メートルのスピードでフルマラソンのスタートを切るようなものです。
ミホノブルボンを育てた調教師のかたが「馬は本質的に全てスプリンター」という至言を残しています。
馬は本質的に1000メートル未満がもっとも適正距離だと。

そういった馬が、2000メートル、3000メートルを走りきるには、騎手の指示に従う賢さが必要です。
「あ、ここでいったら距離持たないから、人間は抑えろと言ってんだな」
と理解する能力がいります。
競馬を知っている馬、というのは、たぶんそういう事です。

では、馬の賢さはどこでわかるのでしょうか。
馬の身近にいれば、だいたい馬房の汚さでわかります(賢い馬は自分が汚れないために馬糞を隅の一ヶ所にまとめる)が、そうでない場合は目でわかります。

まぶたの厚い、目のつり上がった馬は気性が悪く、クリッとした目をした馬は比較的大人しいです。
そして、眠そうな目をしている馬はたいがいおバカさんです。
目に知性の光がある、という言い方をしますが、賢い馬は、ちょっとたまに考えごとをしているような目をしています。
遠くを見ているような目の澄みかたをしています。
そういう目をしている代表的な例がディープインパクトです。
ちょっと茶目っ気があるけれど、自分が何をすれば良いかわかっている目。
そういう目には上品さがあります。
でも、純粋に勝負強いのは、その目の光＋目つきがきつい馬に多いです。
ウォッカが良い例かと思います。

精神力が強く賢い馬は、血統すら超えて、自分で走る体にしていくような気がします。
その奇跡の例がオグリキャップであり、サンデーサイレンスであるのかなと思います(どちらも大した血統ではなく、もともとは安い馬)。

相馬眼とかは一切ないですが、そんなどうでもいい事を考えながら、日々仕事をしています。

個人的に思うのは、どんな能力を持った馬でも、やっぱり「無事是名馬」です。
ケガがないのが一番の名馬です。

写真はレース前の馬と、寝起きで伸びをする馬です。