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2019/05/08 17:08
そのグリーンマイルを行け 後編(5/5Aマーズ・Tセイト・Mブラック)
あー、サラッと書こうと思っても、ここまで来ると1頭1頭に思うこと出てきちゃうなぁ。
んじゃご迷惑でしょうがのんびり書かせてもらいましょうか。さてもう1頭。
8枠16番トオヤリトセイト...この駄文集で何度も書かせていただきましたが、彼は指名馬の最後の最後に選ばせてもらった、隠し玉?秘密兵器?懐刀?でした。裏を返せば、良くて勝ち上がり、最悪、未勝利の掲示板でその馬番が出来るだけ多く見られれば..ぐらいに失礼なことを思ってた存在。俺にしたら大好きステゴのルーツを直に紡ぐドリジャっ子で、更にこの変てこで素敵な名前にググッと来たっつうこと。ルーキーの馬主さんで頼まれてもいないのにここから、この子から、一緒に夢を見られてるような気分になれたこと。そんな安易な選び方...にもかかわらずデビュー勝ち、次の条件特別の4着を挟んで3戦目は平場であっさり2勝目。それもビビり屋でゲートに閉じ込められるのが嫌なゆえ必ずスタートはとちるのだけど、直線は一文字にターフを切り裂いて後方から必ず伸びてくる..って言う何だか時代錯誤な魅力にあふれたまさに切れ味鋭い脇差の号にもその名前が思えてくるような、たまんない子だった。
福永Jを背に持ち味のキレで前走のトライアル、アーリントンCを人気薄ながら3着に飛び込んで辿り着いたG1の舞台。いざ始まるとこれがよかったのか悪かったのか..今までにない絶好のスタートを切るとなんと外枠から被せて好位を行き、最後は直線で競りに競って存分に夢を見させてくれた後、力尽きての8着。16番人気ながら6着とハナハナ差。
鞍上談「スタートがすごく良くてイメージと違う競馬になったが、坂上まで頑張ってくれた。かわされたとは言え、内容はよかった。」おっしゃる通り。1400で2勝、マイルだとどうしても止まってしまう..抜群に研ぎ澄まさていても、あと一寸長さが足りない..肉を存分に切って骨にはどうしても届かない名刀「十八理ト征途」ここにあり..。
競馬では言っちゃいけないことを重々承知ですが..願わくばミッキーブラックとトオヤリトセイト、位置取りを全く逆で見たかった気持ちもチラホラ..。でもこれが現実。夢はまた夢のまま。
直線、見えている背中は遠く、もはやこの時点ですでに自他ともに認める世代最強馬は、こちらを一顧することもなく颯爽とゴール板を抜け、そのまま無敗のまま3歳戦最高の舞台へと旅立って行った。
最も速い者を決める戦いで、急坂を設えた310mの最後の一幕に並べさえしなかった屈辱は深く...不振の主戦騎手と共に2つ目の敗北は重く重く心身にのしかかった。
最初から描かれていた絵図ではあったが、3週後のそこに向かう足取りは決して軽くはなかっただろう。しかもそこに待ち受けていたのは、一度は退けたものの、記録に残る強さで桜の女王となるまでに成長した女傑だった。1番人気グランアレグリア1.5倍...2番人気アドマイヤマーズ4.3倍。屈辱はまだ続いていた..死に枠と呼ばれる8枠17番に決まると戦う前にもかかわらず敗戦のムードが息苦しいほどに濃密になった気がした。
それはファンファーレの後のゲートでもまとわりつき、持ち味の鋭い出足を掬われアドマイヤマーズはスタートに失敗する。前を行きたい彼らが外枠でおかした致命的なミス。そう思った。だが微塵も諦めていない人馬がそこにいた。激しい前の争いを見るやいつもより一段後ろでジッと待つと、外から回すリスクを物ともせず直線に向かって押し上げて行く姿がそこにあった。勝負のムチがあちこちでうなるとほんの少しの隙間さえ許さない厳しい体のぶつけ合いが始まった。
誰の背中ももう見たくない。
負けたくない。前へ。前へ。前へ。
青鋸歯型の背中を浮かせた渾身の追いと耳と共に最後の力までも振り絞る赤褐色の馬体は一体となって3頭併せの真ん中から抜け出た。内で粘る1頭を捉え、外から猛追してきた1頭を振り切り、アドマイヤマーズとミルコデムーロは勝った。勝ち切った。
勝利ジョッキー談「スタートがちょっと遅くなり思っていたよりも後ろになったけど、前に行く馬が多く道中はスムーズ。抜群の手応えで直線に向き、他の馬が外から来たら耳を絞ってまた伸びてくれた。1600mは負けたことはないし、さすが」
ここまで気取っといて、最後がいかにも締まらなくてなんですが、俺、マーズとの1年のこと思い出すだけで、これから1年はそれをおかずに白飯を美味しく食えそうだわ。
濃密な時間を過ごさせてもらいました。苦く辛い敗戦の2枚も含めて全7戦の記念馬券は、このいい歳こいたおっさんにとってもかけがえのない宝物です。
本当にありがとう。秋からもずっとずっと応援してます。