339件のひとこと日記があります。
2012/05/27 07:14
『一日暮らし』
飯山(長野県)の正受庵(しょうじゅあん)に住した…、
道鏡慧端(どうきょうえたん1642〜1721)は…、
正受老人と呼ばれて親しまれてた禅僧であります。
その語録に『一日暮らし』と言う言葉が遺されています。
世の人は、明日はどうしてこうしてと…、
まだ出会っても無い事を思っては苦にしている。
しかも明日の事に心とらわれて、今日の事が怠りがちになっている。
『大体、明日の事は命の事さえも定かでない。』
『だから、今日一日の勤めを励む事だ。』
『どれ程の苦しみも、一日だけと思えば耐えやすい。』
『楽しい事も又、一日だけと思えば耽(ふけ)る事がない。』
『一日一日と思って生きれば、退屈もないし、百年千年でも努められるでしょう。』
『長い一生と思うから大層になる。』
『今日一日暮らすだけと思って工夫をなせば、心も健やかになります。』
これは又、養生の要でもあると述べられています。
去年、日本は未曾有(みぞう)の大地震に襲われ…、
一瞬のうちに家も家族も失った方々の惨状に…、
今も、国中の人が呻(うめ)いています。
仏が説かれたように、この世は実に『火宅』であります。
未来があるはずと思っていた。
その未来が消えた。
今後、何を支えに生きたらよいのか、多くの人々が途方に暮れている。
その虚無感を思えば胸塞(ふさ)がって、言葉もありません。
『どうか今日一日だけは、誠を尽くせますように』と祈る事で…、
悲しみを越えてきた人を、私は幾人も見てきたように思います。
苦難の中で、もがき回っているうちに見出だした道であります。
逃げる事のできない、現実の前では…、
心の真実を、さらけ出して祈る他になかったのです。
何卒、一日一日を努められて、ご自愛なさいますよう、心からお祈りしております。
合掌。
形山睡峰(かたやますいほう)さんが、書かれた手記です。
合掌。