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2012/07/11 13:29
亡くなった母との絆…親子の絆…甦る。二話
私は幼い頃、児童養護施設で育ち、親から愛情をもらわなかった。
そんな私だから子どもを愛せないんだ。
私が悪いんじゃない。
その思いが吉田さんの心を閉ざさせ、やがて…、
もう誰も私の事をわかってくれない。
ご指導もいらない。
何も教えて欲しくないと、支部長たちをかたくなに拒むようになっていった。
『母との絆』
長男の怒りに耐え続けた一昨年の2月、吉田さんは体調を崩し会社を休んだ。
病院に行っても原因がわからない。
潤一さんから逃れようと入院を求めたが断られた。
自然と教会に向かって歩いていた。
《ご指導なんていらないのに…》
それでも教会に足を踏み入れると、支部長が心配した表情で声をかけてきた。
『吉田さん、大丈夫?』
支部長は『教会長さんにお話を聞いて頂きましょう』と、教会長さんの元へ吉田さんを連れて行った。
吉田さんは、教会長に、苦しかった自分の体験、思いを全て吐き出した。
親の話にも触れた。
母*寿子さん(享年51)は、吉田さんの出産と同時に結核にかかり、すぐ入院する事になった。
母の入院と同時に父は寿子さんと離婚した。
その後、吉田さんは姉と父の3人で暮らしていたが、
仕事の帰りが遅い父は、満足に子育てはしなかった。
やがて、小学校入学と同時に二人は施設に預けられた。
寿子さんは吉田さんが25歳の時、病気がもとで亡くなり、一緒に生活した事はなかった。
その事が、吉田さんの心に影を落とした。
『私は本物の愛情のかけらも受けていない、可哀想な人間です。』
全てを語り尽くすと、肩が軽くなった気がした。
あなたが、息子さんを手放さずにずっと一緒に暮らせているのは、
お母さんから、お金や物ではない、本物の愛情を頂いていたからではないですか?
教会長の思わぬ言葉に吉田さんはハッとした。
教会長はやさしく語り続けた。
子供の事を思わない親はいません。
吉田さんは親から愛情を受けていなかったのではなく、
お母さんは、それこそ命がけであなたの事を愛していたのでしょう。
あなたが今、息子さんと暮らせているのは、一緒に暮らせなかった無念を抱きながらも、
あなたを思い続けた、母への恩返しをさせて頂いているんですね。
《そんな…。》
合掌。
次、ラストです。m(__)m