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2012/07/12 13:39
私を導いてくれた長男の怒り。親子の絆…。三話
吉田さんはがくぜんとした。
母の事をそのように考えた事は一度たりともなかった。
吉田さんの脳裏に、娘の事を一心に念ずる寿子さんの姿が浮かんだ。
お母さんは私達に会いたかったのね。
その事を毎日念じながら、20年以上も必死で病気に立ち向かっていったんだ。
母の辛い心情に思いを馳せると、涙が止まらなかった。
そして、潤一さんを愛せない事を親のせいにしていた自分を恥ずかしく思った。
《お母さん、ごめんなさい…》
母との絆…。
自分に流れる温かいものを初めて感じた瞬間だった。
そして、子供たちと一緒に暮らせる事が、どんなに有難い事なのか、しみじみと感じられた。
母との絆は吉田さんに勇気と自信を与えた。
《私には両親がいてくれた。一人じゃなかった》
特に母の愛情は、自分のバックボーンとなり、苦しさを受け入れられる強さになった。
それから3ヶ月、吉田さんは、潤一さんに手紙を書いた。
今までの事、全てお母さんが悪かったね。
ごめんなさい。
潤一の思う通りにさせてあげられなくて、本当にごめんなさい。
小さい時からお母さんの事助けてくれてありがとう。
手紙を書く吉田さんには、貧しい生活を我慢しながら、弟を助け、
母親の事を心配していた、優しい潤一さんの姿がはっきりと見えた。
《ありがとう、ありがとう》と心の中で何度も繰り返した。
『自分も努力が足りなかった』と、ポツリともらす潤一さんがいた。
そうした姿を見るうちに、苦しみを全て他人のせいにして、
両親、夫、そして潤一さんを恨んできた自分は、まさしく潤一さんの姿そのものだったと気付いた。
そこには、自分一人が不幸を背負っていると思い込んでいる怒りの自分がいた。
自分中心なものの見方になっていた事を、潤一さんは怒りを通して吉田さんに教えてくれていたのだった。
願いが叶うから幸せじゃない。
今までの生活の中にすでに幸せが隠されている。
吉田さん親子は、苦しかった長い経験をいかし、
自分たちも、そして周りの人たちも幸せに導いてくれると思います。
合掌。
ありがとうございました。m(__)m