339件のひとこと日記があります。
2013/06/23 12:15
まぁ隣同士とて仕方がない。ちぃとばかし、やりなさいと、しぶしぶ承諾した。
『蓼(タデ)』
両替商「井筒屋」の小僧、主人に伺いをたてる。
旦那さま、又、隣の丸金さんの使いの方が、見えています。
お寿司につけて、食べますから、蓼(刺身のつまなどにする辛味のある植物)
を、分けて下さいと言ってきてますが…。
しまりやの主人、これを聞いてチッと舌打ちをした。
さてしつこいもんじゃ、昨日も同じ口上で貰いに来たじゃないか。
今日も又、貰いに来るとはあんまりと言うもんだ。
まぁ隣同士とて、仕方がない、ちぃとばかし、やりなさいとしぶしぶ承諾した。
それから一言…。
おい、今度はお前が隣へ行って、蓼に付けて食べますから…、
お寿司を、ちぃとばかし下さいねって、貰っておいで。
昭和九年(1772)山嵐作『蓼』より。
このお寿司は、にぎり寿司ではなく押し寿司の事です。
『強盗』
押し込み強盗どもが、相談して、とかく小さい所は稼ぎも少ない。
今度は一つ、大きな所を狙おうと、日本橋の越後屋へ、押し入る事に決めた。
人に、傷を付けては呉服物が汚れて銭にならない。
とにかく、こちらが大勢で手はずを整え…、
出てくる者は、縛り猿ぐつわを、はめて柱へくくりつけよう。
それから、手際よく呉服物を持ち出す。
いいか、ぬかるなよ。
と、申し合わせて越後屋へ押し入りました。
すぐさま、奉公人が「それ押し込みだ」と騒ぎ出す。
すると、どこからともなく、手代や下男が駆け出してきて、これを強盗どもが手早く縛る。
又、出てきた者を縛り、片っ端から猿ぐつわをはめて、柱へくくりつける。
又、後から出てくる。
また縛る。
縛れば出る。
どうにも縛りつくせず、そのうち夜が明けて、カラスがカァカァと鳴き出した。
昭和九年(1772)山嵐作『押し込み』より。
越後屋は、今の三越の全身。
江戸小話第六弾でした。
合掌。( ̄人 ̄)