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2013/06/25 07:03
親方が小坊主の後を付けるとなんと小坊主は寺の山門でふっと姿を消した。狐の仕業だ。
『とうふ地蔵』
昔、江戸の小石川に一軒の豆腐屋があった。
店は、繁盛していたが、欲を出した親方は、材料や大きさをごまかし始めた。
所が、いつの頃からか、しばしば銭箱に、木の葉が混じるようになったのだ。
親方は、見慣れぬ1人の小坊主に目を付けた。
喜運寺の裏山の、キツネが人を化かすって噂だ。
化けの皮を、ひんむいてやる。
翌日、親方が小坊主の後を付けると、なんと小坊主は、寺の山門でフッと姿を消した。
いよいよもって、キツネの仕業だ。
よし、次に来たらタダじゃおかねぇ。
そのまた翌日、又も小坊主の後を付けた親方は…、
寺の門前で、懐に忍ばせた包丁を、振り上げエイヤッと切り付けた。
小坊主は、キャッと一声、とたんにその姿は、煙のようにかき消えた。
逃がすものかと、てんてんと続く血の跡を追う親方。
すると、その跡は境内の地蔵堂の前で途絶えている。
キツネめ、とっちめてやる。
いきまく声を、聞き付けた近所の者や、住職と一緒に、地蔵堂に踏み込むと…。
なんとお地蔵様が、肩から血を流して座っておられるではないか。
その静かな、お顔を見た親方は、ハッとして両手をついて、お地蔵様にわびた。
俺が、よこしまな商いをしたもので、お地蔵様が戒めにいらしたんだ。
申し訳ねぇ。
その後、豆腐屋は正直な商いをして、店も繁盛したそうな。
勿論、あの小坊主が、豆腐を買いにくる事もなかったんだと。
以上です。
合掌。( ̄人 ̄)