339件のひとこと日記があります。
2013/06/26 22:21
病気も回復し国もとへ帰ってみると、徹之介の坊主頭に驚いてどうした事かと聞くので…
侍の徹之介が病気になり、湯治に出掛けたいと殿にお願いしました。
すると、『好きなだけ暇をとらすゆえ、何事も心まかせに、ゆるゆると湯治せよ』と有り難い言葉を頂いた。
早速、有馬温泉に出かけ毎日、温泉につかって気持ちの良い思いをしていた。
が、濡れた髪のしずくが、身体にしたたり落ちるのが、何とも気持ち悪く連れの者に相談すると…。
何事も、心まかせにせよと、殿もおおせられたのだから…、
それほど、気持ちが悪いのなら、切ったらどうだ。
又、すぐに生えてくるにと言う。
もっともだと思い、綺麗さっぱり髪を剃り落とし、坊主になってしまった。
そうして心も軽く、気分良く湯治に専念した。
何日か過ぎ、病気も回復したので、国もとへ帰ってみると…、
親族一同、徹之介の坊主頭に驚いて…、
これは、どうした事かと聞くので、ことの次第を説明した。
親族は納得せず、いかに殿の心まかせに、とのお言葉でもこの事は別だ。
とにかく事情を申し上げなければ、とうてい許してはもらえないぞと言う。
徹之介も事の重大さにオロオロして、殿様の御前に震えながら出て行った。
殿様は、坊主頭を見てその方、坊主になってしまったのなら、俗名ではすまされまい。
これ、この者に名を付けてとらせよと家来に言いつけた。
家来、早速徹之介に"安椀"と言う名を付けた。
殿様、この名を聞いて『これは珍しい名じゃ。して由来は?』と問われる。
家来、かしこまって『はい。』総じて値段の安い器は…、
お湯に入れますとそのままそります。
この男も湯に入って剃りました故、安椀でございます。
殿様は、椀がそるのと、髪を剃るのとをかけたシャレに大笑いしたそうです。
徹之介は、難を逃れたお話でした。
元禄17年(1704年)の作者未詳『湯治して髪を剃る男』よりでした。
小話を載せて頂きましたが、mr.miracleの載せる小話は…、
江戸小話ですから、ちっと時代が古いので退屈かも知れませんね。(>_<。)
合掌。( ̄人 ̄)
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mr.miracleさんがいいね!と言っています。