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2013/06/28 22:48
小僧が大黒様に、みんな大変と言うに、のんびり笑うとは福を運ぶのが仕事じゃろうに…
〜塩買い大黒さま〜
昔、薩摩の国で塩が不足した年があった。
川内(せんだい)の泰平寺(たいへいじ)の辺りは特にひどく、
毎日の、煮炊きにも事かく始末でした。
寺でも、塩探しに走り回っておった。
そんなある日、本堂を掃除していた小僧どんが、
仏さまと、並んで座っておる大黒さまに、恨み言を言ったんだと。
みんな塩探しに大変だと言うに、大黒さまは、のんびり笑うておられるとは。
お前さまは、福を運ぶのが仕事じゃろうに。
小僧どんが大黒さまに、ぶつぶつ言い続けた数日後の事じゃ。
『大黒さまの姿が見えん。どうしたこった。』
和尚さんをはじめ、寺じゅうのみんなが大騒ぎじゃ。
けれど、どんだけ探しても大黒さまは見つからん。
しまいには、ネズミに取られたんじゃろうと、みな諦めたんじゃ。
数日後、川内(せんだい)の港に、
塩を一杯、積んだ船が、急いでやってきた。
その船の船頭は、数日前川内に、塩を急いで届けてくれちゅうて、
どっさり、お金を置いていった客がおったんじゃ。
変わった格好をした人でな、ふんわりした着物を着て、頭巾をかぶり、
大きな袋を、かついでおったよ、と言うのじゃった。
小僧どんは、びっくり仰天。
『そりゃ、うちの大黒さまにそっくりじゃ』あわてて本堂に行くと、
消えたはずの、大黒さまが、仏さまの横にちゃんと座っておいでじゃ。
しかもその足には今、歩いてきたばかりのように、境内の砂がついておったんだと。
『ひどい言い方して、すまん事し申した。ほんにありがとごわした。』
小僧どんは手を合わせて謝ったが、
大黒さまは何もしらんふうに、
笑ったままどっかりと座っておられたって。
故郷の仏教民話から鹿児島県のお話でした。
合掌。( ̄人 ̄)