競輪
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2013/11/07 10:34
消えてしまいたい��
和樹君が幼稚園に入園する頃には、母親のことよさん(65)に子供の世話を押しつけ、
自分は仕事の合間に、学生時代の友人と遊び歩くようになった。
祖母の葬儀が行われたのは、丁度その頃だった。
祖母と自分を重ね合わせて見ていた鈴木さんには、
その死が、自己の行いに対する罰のように感じた。
そして祖母の葬儀以来、鈴木さんは職場でも仕事への対応が上手く出来なくなった。
自分の言動が、回りの人からどう思われているのか、
人の目が気になり、他人の言葉に敏感になった。
そして、周囲の人に心を閉ざし、自ら孤独を求めるようになっていた。
この頃、鈴木さんは診療内科にも通院している。
だが、医師に何をどう説明すればいいのか分からなかった。
そのもどかしさが苛立ちとなり、矛先が幼い和樹君に向けられた。
その度に、ことよさんは孫をかばい、鈴木さんは泣いた。
『何したんや。子供にあたる事ないごで』
『私、どうしていいが、わかんね』
『もう構うごどねえ』
最後は父の勝(ﾏｻﾙ)さん(68)がそう言って、ソッポを向いてしまうのだった。
《今の状態では両親がいないと生きてはいけない。》
《でも、自分がいる事で家族みんなに迷惑をかけるなら、いっその事……》
やがて鈴木さんは、死を現実的に考えるようになっていった。
鈴木さんを心配したことよさんが、佼成会の会員である姉に相談したのもこの頃だった。
入会したことよさんは修業に励み、３年前、鈴木家に待望のご本尊を勘請した。
しかし…その勘請式の翌朝、鈴木さんは焼身自殺を図った…。
《母へのエール》
幸いにも、鈴木さんは一命を取りとめた。
火をつけた瞬間、熱さで我に返り、目の前の農業用水に飛び込んだのだ。
だが体の45%はすでに大火傷を負っていた。
その後３ヶ月間、鈴木さんは入院し、三度の皮膚移植と過酷なリハビリを受けなければならなかった。
ことに、寝たきりの状況で看護師から下の世話を受けるのは辛かった。
《死ねなかったうえに、こうして人の世話になっている…》
その現実が耐えられなかった。
だがその思いがかえって、鈴木さんをリハビリへと駆り立たせる原動力となった。
(続きます)
